考え方

スターバックスにマニュアルが無いのはなぜ?

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スターバックスの人材マネジメント

スターバックスコーヒーは、ひとりでゆっくりくつろぐもよし、ちょっとしたミーティングをするもよし。私も普段から何かとお世話になる機会が多いです。どこの店舗に行っても、店員さんの対応がにこやかで気持ちいいですよね。カップへのメッセージが評判になっているように、ちょっとした心遣いが嬉しいです。
coffeeさて、そんなスターバックスの人材教育について同社人事部の方のインタビュー記事(2008年)を発見しました。
「自主性を引き出す」人材マネジメントとは ~マニュアルがなくても人は動く~」
サービスレベルとブランドイメージを維持しながら、ひとつひとつの接客は柔軟に。そのヒントをこのインタビューから読み解いてみたいと思います。

ルールを決めるところ、ルールを決めないところ

答えは、この一文に集約されていました。

“ドリンクのレシピなど、品質にかかわるルールは厳しく定められています。でも、お客様へのサービスに関するマニュアルは、アルバイトも含めて一切ありません。スターバックスならではのホスピタリティを実現するためには、マニュアルで細かく縛るよりも権限を委譲して、パートナー個々の自主性や創意工夫をどんどん引き出したほうがいいと考えているからです。”
Working at a Coffeeshop同社のサービスの根幹となる「ホスピタリティ」を実現するために、スタッフ全員の自主性や創意工夫を引き出す。そのための様々な取り組みや考え方が語られています。「ミッション宣言」というあるべき姿の共有に始まり「組織のフラット化」「現場への権限移譲」そして「コミュニケーション」「キャリアパス」など、人事制度全般が非常に綿密に設計されていることがわかります。

ただ、もちろんドリンクのレシピは厳しく決められているようです。どの店舗のどのスタッフに注文しても、まったく同じ味が楽しめる。これは多店舗展開の飲食店では何よりも大事なことです。当然のことながら、この部分での自由度はまったくないようです。

マニュアルの代わりに、長時間の教育プログラム

そして、そのレシピや基本的なオペレーションを覚えるために26時間の教育プログラムが、きっちりと運用されているとも書かれています。

“新人は店舗のオペレーションを学ぶために、正社員、アルバイトの区別なく全員が同じ教育プログラムを受講します。最初のステップである「バリスタ(ドリンクをつくる技術者)」の研修だけでOFFJTが4クラス、OJTが7つのモジュールの計11プログラム。26時間を要します。”

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「マニュアル」ではなく「綿密な教育プログラム」という手段でオペレーションの徹底を図っているわけです。マニュアルも教育プログラムも数ある手段の一つ。労力、時間、コストとそれによる効果を熟慮した結果、同社は(おそらくコストも時間も相当かかると思われますが)「教育プログラム」という手段を選択したのだと思います。

スターバックスの事例からの示唆

この記事から学ぶことのできるポイントは以下の3つです。

  • 1)「ルールを守るところ(基礎)」と「自主性を尊重するところ(応用)」を区別する。
  • 2)ルールを徹底するための「しくみ」を構築、運用する。
  • 3)「しくみ」=手段は、その会社にとって最適なものを選択する。

「スターバックスはマニュアルがないから、接客レベルが高い」と表面的に捉えてしまうと、「基礎をやらないから、応用できている」という風に誤解しがちです。しかし真相は全く逆です。「基礎を身につけているからこそ、応用ができている」のです。

何が基礎で何が応用か。習得のためにどのようなしくみを構築するか。マニュアルの有無といった表面的な事象に惑わされず、各社のあり方を考えていくことが重要です。